文化財

大前神社の由緒は、奈良時代の神護景雲年間(767~)に再建されたと言われ、延喜式内社下野十一社に選ばれている。文化財の数々は、真岡を流れる小貝川・五行川・鬼怒川流域の歴史文化が息づいている。平安時代には、最澄が開基した天台宗の東国の拠点である、茨城県関城町の東叡山に関わる「大前山金剛院千妙寺」が別当宮寺として造営された。明治維新まで神仏混淆し、「大前 大権現」と称せられた。宝物の芳賀高名奉納「太刀」、大江宣村願主「大般若経」、芳賀高澄奉納「大前神社平家物語」など中正の武 将芳賀氏ゆかりのものである。

また、現存する真岡市最古の地図である、江戸時代牧場裁定の「元禄絵図」には、当時の小貝川・五行川・行屋川と大前堰・穴川用水・根本山・磯山・大前神社・真岡城趾・陣屋・真岡街・街門・寺院、政成寺・那須街道など当時の歴史的地勢が分かる。そして、 江戸時代末期には山内代官の功徳碑が建てられ、二宮尊徳は大前神宮寺に拠点を置き、大前堰を改修して穴川流域を整備し、尊徳仕法を完成させたことは有名である。

大前神社の本殿・拝殿の建築様式の特徴は、東照宮に代表される近世初期の権現造に準ずる複合型社殿形式である。社殿の意匠はかなり発達した段階の装飾細部を備え、虹梁・壁・蟇股・垂木など各所に彫刻が施され、華やかな構成となっている。中でも龍の彫刻と化した尾垂木はひときわ目立ち、水神として社殿を火災延焼から守っている。これらの彫刻のデザイン設計施工は棟梁藤田孫平治、工匠島村円哲たちによりなされた。この人たちは五年後、成田山新勝寺の三重塔の彫刻も手掛けた。

本殿の彫刻の特徴は、第一に、建物を未来に継承させるため「水の恵みと水神」を配していること。その代表なものとして、龍・水の中を泳ぐ鯉・海水・海獣・犀・玄武などがある。第二に、神聖な霊獣・霊鳥を配し神様の力の広大さを表している。麒麟・貘・白象王・虎・獅子(ライオン)・鳳凰・鸞・鶴・鷹がある。第三に、限りある人生の理想の生き方として、「仙人」を配している。仙人は十ヵ所に配され、瓢箪から駒を出す仙人・酒を楽しみ魂を生む仙人・お香を薫く仙人・鯉に乗り病気を治す琴高仙人等がある。建物の基礎部分には亀腹様式を採り、瑞垣内は川原玉石を敷き詰め水の中に御殿を浮かべる情景をデザインしている。まさに、近世日本人の先駆的思想文化を現している。それから、造営後何度となく修繕を行ってきたが、中でも宝暦十二(1762)年の時の棟梁磯辺儀左ヱ門信秀は、鹿島市の屋台彫刻を始め足利など県北・県南西の社寺と彫刻屋台の初代棟梁であることが今日明らかになった。

 大前神社本殿

 (建造物) 1棟 (三間社入母屋造り 向拝付 銅板葺)

大前神社大前神社の由緒は神護景雲年間(767年~)にご再建されたと云われ、延喜式撰上の由緒ある神社である。現在の社殿は文禄2年の再建といわれる。その後、数回修理が行われ、中でも宝永の大修理で現存の彫刻類が出現した。藤田孫平治棟梁の下、島村円哲らの名工による。本殿は三間社で向拝があり、随所に唐獅子・龍・象・麒麟等の霊獣彫刻が施されている。特に、琴高仙人を始め神仙思想の彫刻が12ヶ所在り、全国一の仙人絵彫刻がある。御殿全体に彩色塗装が多く施され、壁には華やかな地紋彫で彩られている。御殿様式も和様と唐様の折衷式で江戸時代初期の特徴をよくあらわしている。(平成30年12月25日重要文化財指定)

 大前神社拝殿

 (建造物) 1棟  (三間三面 入母屋造り千鳥破風付 銅板葺 向拝一間軒唐破風付)

大前神社拝殿は元禄の初め(1688)に完成したと伝えられている。入母屋造り、平入りで正面に千鳥破風、向拝に軒唐破風を設けており、背後には凸字型に幣殿を供えている。正面の向拝は三斗組で竜の彫物を用い、唐獅子の木鼻をつけ、向拝軒唐破風には鳳凰の懸魚をさげている。平殿天井には四季献花の絵が、拝殿内天井には龍3頭が、拝殿外天井には鯉3尾と四神図が描かれている。本殿と同様、彫刻などに江戸時代の特徴が良くあらわれている。(平成30年12月25日重要文化財指定)

 大前神社両部鳥居

 (建造物) 1基  (高さ中央6.1m 屋根付き)

大前神社享和2年(1802)建立の鳥居で、両袖部が存する両部式鳥居の代表的なものである。大前神社参道の第3の鳥居で、全体の形もよく整っている。尚、木造の鳥居では現在する江戸時代のものとしては、県内最大のものである。(昭和56年12月25日指定)

 銅燈籠

 (工芸品) 1基  (青銅製 総高 3.0m)

大前神社江戸時代 天明3年(1783)「大前大権現・荒樫大明神 御寶前」刻名、作者下野佐野天明町 丸山善太郎藤原重昌 (昭和34年11月27日指定)

 太刀 無銘

 (工芸品) 1基  (長さ 89.7m)

南北朝時代 (昭和40年1月26日指定)

 紙本墨書 平家物語

 (大前神社本) (書跡) 11冊

年代 天正16年(1588) 写本者 般若寺住職 龍海和尚 (昭和42年4月7日指定)

 版本大般若経

 (書跡) 586巻

明徳3年(1392)に寄進されたもの 室町時代 (昭和42年4月7日指定)

 

 刀 無銘

 (工芸品) 1口(昭和42年4月4日指定)

 

 元禄絵図

 (歴史資料) 1枚(昭和53年3月20日指定)

 

 山内明府功徳之碑

 (歴史資料) 1基(昭和61年4月15日指定)

 

 算額

 (有形民俗)   2枚(昭和53年3月20日指定)

 

 永代大大御神楽之碑

 (有形民俗) 1基(平成15年2月19日指定)

河野守弘 撰書 安達三楽斎元善 揮毫

 

 大前神社大大神楽

 (無形民俗) (平成15年3月11日指定)

 

 拝殿天井画鯉

拝殿天井画鯉

 

 拝殿天井画朱雀と白虎

拝殿天井画朱雀と白虎

 

 拝殿天井画青龍と玄武

拝殿天井画青龍と玄武

 

 桶に南天と水仙

桶に南天と水仙

 

 籠に菊と萩

籠に菊と萩

 

 梅に兜

梅に兜

 

 拝殿天井画龍

拝殿天井画龍